
朝日新聞社特別報道部=著/学研パブリッシング=刊
「プロメテウスの罠 明かされなかった福島原発事故の真実」
(朝日新聞社特別報道部=著/学研パブリッシング=刊)
昨年、震災半年後にスタートし、朝日新聞連載当時から話題となっていた東電福島第一原発事故の真相を追った特集記事「プロメテウスの罠」。今、改めて手に取ってみて意外に思うのは、版元が朝日新聞社でなく、学研パブリッシングである事だ。
著者は、朝日新聞でも政治部でなく特別報道部。それ故、フットワークのある特集記事を発信する事が出来たという。
ただ、やはり昨年5月に話題となったNHK ETV「ネットワークでつくる放射能汚染地図」の制作過程を追った第二章「研究者の辞表」において、「NHKは30キロ圏内入りを自主規制していた」と批判を述べているが、朝日新聞自体が社員を30キロ圏外に退避させていた事には触れないのは、やはりフェアでなく、良書であるだけに惜しまれる。
(発刊直前にニコニコ動画で放映された『「プロメテウスの罠」〜取材で見えた福島原発事故の深層〜』では、司会の高田昌幸氏からその点を指摘され、デスクの宮崎氏が内規30キロ・ルールを認めた。政府発表に乗っかっていたマスコミの社員が自社の取材規制を認めたおそらく初めての例と言える。そのためか現在、Youtubeの投稿は削除されている)
全体的には各章とも読み応えがあり、今となっては知られているSPEEDI封印顛末の他、スクープ的な記述があちこちに見受けられ、震災直後に実はパニックに陥っていた政府・行政のヘタレぶりにただただ呆れるばかりだ。
「毎時500マイクロシーベルトを超えていた。2時間いただけで年間許容量の1ミリシーベルトを超える値」の中に浪江町の住民が<放置>され、警官も「でも政府から止められていて言えなかった」という箇所には強い憤りを覚える。
3月15日夜、文部科学省茨城原子力安全管理事務所の職員が測定した「浪江町赤宇木の毎時330マイクロシーベルトは、翌日同省のホームページ(HP)に載せられた。/ところが肝心の測定地点は、ほとんど地名のない地図上に○で囲んだだけ。町の関係者ですらその地点を認識できなかった。」
「検査官は原発内でその状態を監視する唯一の国の人間。福島第一には5人いて、常に一人は原発に詰めている。ところが現地本部が福島県庁に退避した3月15日昼、5人全員が県庁に退いた」
しかも現地測定した貴重な放射能測定の「データを入れたファイルを現地に置き忘れていた。回収したのは5月28日になってから。事故直後の放射線値のほとんどは、6月3日まで表に出なかった。」
第六章「官邸の五日間」に関しては、政府・保安院・東電の対応には開いた口が塞がらない。氣分が悪くならないよう、食事しながらの「ながら読み」や血圧が高い人へもオススメしない。
無論、正しく怒りたい人、日本を建て直したい人はぜひ読んでおくべき一冊であろう。
(「J-one」発行人 すぎたカズト)
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