ふんばれ日本!(6)

「J-one」姉妹誌「ナマステ・ボリウッド」コラム(2011.5.8)より転載。
4月中旬にナマステ・ボリウッド単独で支援物資を運んだのに続き、月末にかけてNGOの手伝いとして再び宮城・岩手・福島を9日間で2500kmほどまわって来た。東日本大震災の発生から1ヶ月半が経とうとする中で、少しづつ見えて来た復興への兆しをレポートします。
ナマステ・ボリウッド主宰 すぎたカズト

依然続く閉塞感
東北三県をまわった中で、相変わらず出口の見えない苛立ちに包まれているのが福島県だ。東北道・国見SAでは福島産の物販など応援をこめて飛ぶように売れていたが、福島第一原発問題は遅々として進まず。「避難所からタクシーで街へ出て酒を飲んではタクシーで戻る」と言われる状況から、そうでもしなければやってられない閉塞感が見て取れる。
原発を巡る東電と政府の隠蔽工作は、多額の広告宣伝費で抱きかかえ癒着関係にあった大手メディアでも徐々に報道されつつあるが、まだまだ氣が抜けない。郡山市は市内小学校校庭の表土を自主的に除去(*a)するなど、不安要素も多い。
原発事故の補償は原発のある沿岸部が優先となるとかで、内陸に位置する郡山市内での倒壊、半壊(*b)などどこまで補償されるのか判然とせず、これまでの不況によるマイナス分も手伝って郡山市民は補償格差の懸念が高まっているという。
5月6日、管首相は、ユーラシア・プレートとフィリピン・プレートの境に隣接し東海大地震が懸念される静岡県御前崎市にある浜岡原発(*c)全原子炉(一時的な)停止を唐突に要請したが、原子力政策による飴玉をしゃぶらされた地元の困惑が報道から浮かび上がっていた。

自活への支援
郡山の友人によると、海外からの支援者が近く来日するが集まった支援金の使い道に悩んでいるという。つまり、義援金や支援金としてそのまま募金してしまうのがいいのか、直接、支援先を探し出して手渡しするのがいいのか、ということだ。
かつてネパールを訪れていた頃、よく耳にしたのが「学校を建てる」箱型の援助だった。教育予算に苦しむネパール政府は僻地に学校を建ててもらっても教師の給料を維持できず、結局、廃校になってしまうケースが多い。これらの活動主は地元新聞などに取り上げられ「何十校作った」と誇らしく語っていたが、長く学校運営を支援し続けなければ意味がない。そうせずに数を作るのは「学校用地ブローカー」とのつながりもあるからだ。
一時、カトマンドゥー郊外にある孤児院を支援したく思い何度か訪ねたが、どうにも不信感が拭えず訪問を中止した事がある。まさか日本で震災にかこつけて黒いビジネスが横行するとは思えないが(震災以前はいろいろな不正受給が発覚していたが)、それなりの支援金を集めたからには有効に使ってもらいたいのは誰もが思うところであろう。
そんな相談を受けて、ふと思ったのが、被災した中小企業や個人商店への無利子貸し付け、つまりマイクロファイナンスだ。(5)にも書いたように被災者の「自立」が求められる時期に差し掛かっている。それまで働いて来た者にとっててっとり早く稼ぐ方法は、これまで携わってきた本職の再開であろう。津波や地震によって被災し業務再開の目処が立たない自営業者に無利子で貸し付けるのだ。海外で行われているマイクロファイナンスは貧困者の支援をする職員の給料を捻出するため低利となっているが、今回は「災害見舞金」の意味合いから無利子でもよいだろう。二重ローンという重荷になる可能性もあるが、「施し」でなく「融資」とするのは、生業へのプライドを尊重することがひとつ(もちろん、震災孤児へのスカラシップでもよい)。
そして、世界に眼を転じてみれば、各国で地震やハリケーン、ツナミ、洪水などの天災、政情不安やテロ、戦争などの人災があふれている。今回の融資で事業を立て直した暁には、その金額を世界のどこかで再度役立ててもらえばいい。そうすることで事業の立て直しにもより力が入るのではないだろうか。

新たな世界へ
3月下旬、ナマステ・ボリウッドとして個人的に支援物資を買い集めていた時のことだ。軍手198円の値段を見て考えさせられた。1組ではない。1ダースでこの値段なのだ。日本製の4分の1の値段であった。機械編みによる大量生産なのであろうが、単純計算して片方8円25銭。販売店の利益・国内での運送費・輸入コストなどを差し引いて原価1円程度だろう。当然、これを作る職工の手取りは軍手片方1つあたり数十銭がいいところ。東北の被災地を思って手に取った支援物資が他国の労働搾取の上に成り立っているかと思うと複雑であった。
大手スーパーなどで売られている激安ジーンズは、バングラデシュ製だという。この話をバングラデシュ人の友人へ素直に話す氣になれない。なぜなら、発注元が中国での人件費が上がったから、より安価に製造できるバングラデシュに移しただけなのだ。中国は今やインドと共に世界が注目する消費市場へと生まれ変わったが、バングラデシュも経済が伸びた矢先、より人件費の安いアフリカなどへ大量発注が移され景氣が落ち込むのでないか。ネパールでのパシュミナ・バブル崩壊を知っているだけに先が思いやられるのだ。
実は、この構造が原発問題にも絡んでいるように思える。なるたけ安く物を買いたいために人件費の安い労働力を使う、原発はなにかあると困るから(送電ロスも無視して)過疎の地方に作る、という風に。
震災直後に放映された推進派文化人を集めた深夜の討論(暴言)番組で「原発を東京の横に」という声に誰もが一瞬絶句、失笑し一蹴した。つまり「原発は許容だが、自分のそばには御免」という訳だ。果たして「原発はやっぱり必要。国民みんなで使うのだから、事故が起きた時は裁判員制度のように事故処理作業員を国民全員から抽選で選ぼう!」と言える推進派/許容派がいるだろうか。
これだけの被害を目の当たりにしながらも原発を抱える地元でNOと言えない背景には、過疎地での「雇用」という苦い恩恵があるからだ。だから、原発から遠く離れ、電力だけを享受している立場で単純に「すぐに原発はやめろ」と言うのは、過疎の地に新たな重荷を押しつけることになる。原発から脱却するのであれば、同時に雇用を保障し続けるべきだろう。それは火力発電所建設でもいいし、あるいはアマゾンのような物流センターでもよいはずだ。
原発利権をアテ込んでいた電機メーカーやゼネコンも世界の趨勢を見極めて、いち早く脱原発へ動くべきだ。現在、国際的観点から日本は環境テロ国家扱いとなっているのだからニュー・クリア・ジャパン・バッシングを予想し、自社他業種における海外シェアを考えれば無理に原発利権にしがみつくのはマイナスであるはずだ。
それに「利権」というとダーティーなイメージがつきまとうが、これからソーラー、風力、地熱などの自然エネルギーにシフトしてゆくにあたって、日本全国の電力をまかなうためには巨大なプラント建設が必要となってくる。どの道、電機メーカーやゼネコンはそこで新たな「ソーラー利権」、「風力利権」、「地熱利権」にありつけるのだから、原発御用(誤用)学者以外、固執する必要はないだろう。

(*a)自主的に:独自に放射能測定値を公表していた郡山市内の小学校がHPでの掲載を「自粛」。現在は週1回の測定値をPDFで更新。

(*b)郡山市内での全壊、半壊:郡山周辺は10万年ほど前の古代に湖であり、比較的地盤が弱いとのこと。

(*c)浜岡原発:中部電力管轄。福島第一と同じGEマークⅠの1〜2号機は老朽化のため2009年1月に終了廃炉へ、昨年8月11日に起きた駿河湾地震(M6.5)で5号機タービン建屋がヒビ及び地盤沈下、制御棒30本の駆動装置が故障したため停止。御前崎市で震度6弱。震源地は浜岡原発から20kmほどの駿河湾で、同じく9日に八丈島付近を震源としてM6.9、13日に八丈島沖でM6.6、15日に静岡県東部でM6.4が連続して発生。東海大地震への懸念から推進派議員の間でも「浜岡を止めろ」という声があがっていたという。

*追記 2011,05,09
「技術提供」と引き替えにモンゴルに核廃棄物処理場を日米で計画していた、とのニュースが。モンゴルはウランを豊富に埋蔵しているとのことだが、「臭い物は過疎地に」式の発想そのもの。

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