4号記事:書評「むかし原発 いま炭鉱」

『むかし原発 いま炭鉱 炭都 [三池] から日本を掘る』熊谷博子・著/中央公論新社・刊/2300円+税

『むかし原発 いま炭鉱』
熊谷博子・著/中央公論新社・刊/2300円+税

『むかし原発 いま炭鉱 炭都 [三池] から日本を掘る』
熊谷博子・著/中央公論新社・刊/2300円+税

文化を生み出した炭鉱、文化に蓋をした原発
本書は「右手にカメラ、左手に子供」がモットーとする熊谷博子監督が単館上映で1万人以上を動員した三池 終わらない炭鉱の物語(2005)の制作過程を綴ったメイキング・オブ・ドキュメンタリーであり、日本一の炭鉱・三井三池炭鉱閉山後に催されたシンポジウム「歴史を生かしたまちづくり」への参加から映画完成まで実に8年にも及ぶ大格闘と、本書執筆中に起きた東日本大震災と福島第一原発事故を踏まえての、炭鉱に引き寄せられた執念の記録である。
福島県浜通り地方には茨城県と跨がって本州最大を誇った常磐炭田(1976年に閉山)があり、震災後に炭鉱の資料館を訪ねた熊谷監督は、常磐炭田史研究会の一文に出会う。
「浜通り地区は明治以降、首都圏へのエネルギー供給地としての役割を果たしている。昔は石炭、今は原子力を主とする電力である」
炭鉱には子育てする女たちも坑道の中に入って男たちと共に働いていた。田川の「炭坑節」は盆踊りの定番ソングとして日本全国に広まり定着している。「炭鉱はさわれる。人間の生活と共存できる/だが、原発は違う」。
7年代に入って全国の炭鉱が次々と閉山するにつれ、離職した炭鉱労働者たちの成れの果てが「原発ジプシー」と呼ばれる原発作業員であった。本書では、放射線管理手帳の存在すら知らず “ 原発ぶらぶら病 ” となって使い捨てられ、ひっそりと筑豊へ舞い戻って暮らす労働者の末路や、漁協と共に闘い山口県豊北町(現・下関市)の原発計画を止めた中国電力の労組「電産中国」や最初で最後の原発下請け労働者による敦賀原発の労組「原発分会」等を取り上げ、そしてチッソ・水俣の問題へとたどり着く。
過去を問い直す時、初めて未来が見えて来る事がある。熊谷監督は「三池には今に至る日本が詰まっている」と書いているが、書名のように原発が過去の物となり、コミュニティーを含めた炭鉱文化が見直される事を期待したい。

熊谷博子(くまがい・ひろこ)/ドキュメンタリー映画監督。1975年より日本映像記録センターでTVドキュメンタリーを制作、85年よりフリー。三池以外の映画作品に、戦下のアフガニスタンを描いた『よみがえれカレーズ』(1985/土本典昭監督との共同作品)、自らの育児体験をもとに『ふれあうまち 向島・オッテンゼン物語』(1995)、『映画をつくる女性たち』(2004)。著書に『「やめたい病」にさようなら』(情報センター出版局)。

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