双葉町復興再生に向けて、300年後への提言
井上 仁さん(フクシマ復興応援ネットワーク)
経営コンサルタントの経歴を活かして、
双葉町・浪江町の復興再生を
子孫代々への長期スパンで展望を探る
ネットワーク。
13の課題を挙げて、生活再建へ向けて活動
すぎた和人(J-one):双葉町ご出身だそうですね。
井上仁:生まれ育って、18歳まで双葉町におりました。今、義理の姉がひとりで白河の仮設住宅で生活していますが、双葉町の実家も少し前までは三世代、両親、兄夫婦とその子供夫婦が一緒で、すごく賑やかだったんです。その後両親と兄が亡くなったり、子供夫婦も仕事で外へ出たりで、震災当時は姉がひとりで実家を守っていました。その代わり、盆暮れは私達兄妹のファミリー全員が集って、だいたい20人くらいで1週間ぐらい一緒に合宿のような生活をするのが続いていました。それだけに、思い返せば、原発事故が悔しいですね。
すぎた:今、首都圏では核家族化が進み転居も多いのが一般的で、福島の家族形態、特に飯舘村などでは四世代同居も珍しくなかった中での避難移住によって家族が分かれて暮らす事や郷土を離れる事への負荷が共感され難いように思います。
井上:地方はどこでも同じだと思いますが、人との繋がりあってのコミュニティーですから、それがなくなったら村も町もなくなってしまいます。もうひとつは、自然そのものですよね。あの山、あの川、そういう自然が焼き付いていて、一体となって生活の場になっていますから、都会とは違います。
すぎた:そうした背景から、井上さんは震災後に「フクシマ復興応援ネットワーク」を立ち上げて、活動されて来られたのですね。
井上:福島の復興再生について13の課題を挙げて、国に提言出来るよう、みんなで議論を重ねているところです。賠償の問題に限って言えば、生活基盤を失われて、今までの文化、絆、繋がり、すべてを奪われた。その辛さに対してお金では補う事は出来ませんけれど、やっぱり国策の犠牲で終わらせてはいけない。敢然と闘わなければならないと思います。そこだけは譲れないと。東電と国に責任を認めさせた上で、正当な額の賠償金を請求すべきです。原発の損害賠償法は「事業者は、損害の発生に故意・過失があったか否かに関わりなく、賠償責任を負う」という法律で、それを逆手に「賠償はするんだから、責任の問題は持ちだすな」と東電なんかは言っている。私も福島の出身者として、郷里の人達を「日本のエネルギー政策の犠牲になった」という事で泣き寝入りさせてはいけない、ちゃんと責任を認めさせた上で正当な賠償を払ってもらうしかないと思うんです。生活再建へ氣持ちの踏ん切りをつける上でも、そこは(現段階では)お金で決着をつけるしかないんです。
(中略)
日本のモデル・ケースとしての福島復興を
すぎた:福島で起きている問題は、過疎化という点では日本全国共通の問題ですからね。
井上:私達の祖先である一向宗徒が天保年間の飢饉で人口が減った相馬藩に移民したという歴史があります。ただ、現代では、町ごとそっくりどこかに移動となると、なかなか現実的な課題になり難い。
すぎた:天保年間まで遡らなくても、飯舘や裏磐梯も戦後の開拓で入った例はありますね。もう一度、どこかへ入植して…というのがあっても良さそうに思います。
井上:個人としてはあり得るでしょう。しかし、地域全体として移住というのはどうでしょうか。今は職業も多様化していますから。昔のように農業、林業、漁業というようにひとつにまとまった集団であれば、話としてもあり得ると思いますが。ただ、「農業をなんとかやりたい、続けたいという人」を対象にという形だったら…。
すぎた:よく「福島県民」とひと括りで言われますが、ここ十年程でも農業をしたくて福島県に移り住んだIターンの人達がいます。その人達は、先祖代々の土地を持っている訳ではないので、農業が出来れば別のところでもいい。そう思って、他県へ移る人も出ています。そういう農業の入植者を募った形で福島県の中で線量の低い会津地方なりへ、「仮の町」とかでなく「受け入れ地域の活性化」という形だと計画し易いのではないでしょうか。関東の若い人達でもこれから農業をやりたいという人達はいますから、原発被災者だけでなく、そういった人達も受け入れる形で。
井上:そういうテーマはいいですね。何か発端を作って頂けたら、13番目の課題として追加したいですね。それに近い話ですが、「復興再生の呼び水となる事業の誘致」というテーマもあります。ある被災自治体にIC関連の工場やソーラー発電所を誘致しようという話です。被災者の中で力のある人達を農業、林業、誘致事業のミックスで過疎地を復活させるというプロジェクトに積極的に呼び込むというのは、ネットワークとしても関心の高いテーマですね。
以下、「J-one」9号をご覧ください。
井上 仁(いのうえ・じん)1941年、福島県双葉町出身。東京大学卒。ベルヒュード国際経営研究所を主宰。「フクシマ復興支援ネットワーク」事務局。著書『困った組織と、どうつきあうか』(ダイヤモンド社)、『ごせやける許さんにぇ―フクシマ原発被災者の歩み・双葉町から これまでの3年、これからの3年』(言叢社)他。
「フクシマ復興応援ネットワーク」では、上記インタビューから発展した農家支援プロジェクトとして環境保全型ラジアントハウス有機農法の実証栽培試験プロジェクト費用をクラウドフアンディングにて支援の協力を求めています。ご協力をお願い致します。
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