J-one ムービー・プロジェクト
旧警戒区域 南相馬市小高区
「小高を撮る」
J-one 10号「それでも原野に生きる」掲載の2014年11月に撮影した小高川に、今年もまた鮭が産卵のために戻って来た。鮭の回遊スパンは4〜5年と言われ、今年の鮭は11年の春ーーちょうど福島第一原発事故直後に孵化した鮭ないし、翌12年の鮭。南相馬市小高区は第一原発から20km圏内の警戒区域に指定された事から鮭の人工繁殖が行われず、この鮭たちは天然孵化しては大海原に臨み、4年かけて太平洋の荒波を乗り越えて帰って来た事になる。
今年は10月下旬には鮭の群れが川面のあちこちに見られ、トータルで13日間粘って鮭の放精場面まで撮影する事が出来た。南相馬市博物館の稲葉修学芸員の話では、「当地域のサケの産卵行動は、通年ですと10月から12月上旬ぐらいまで観察でき、多くの個体が入れ替わり産卵しています。しかし2015年の遡上と産卵は例年よりも早く、10月にはじまった産卵が、11月中にほぼ終了してしまいました。現在、小高川でのサケのふ化事業は行われておらず、震災・原発事故以降は自然産卵によるサケ自身の繁殖が行われています。これは、本来あるべき自然の姿です。たくましく、美しい、被災地に生きる野生の姿です」との事だった。
去年の撮影日をチェックすると11月末であったが、今年は11月の中旬に再訪した時にはわずかに残っている程度で、川縁や川底に生殖を終えて生命が燃え尽きた鮭の遺骸がそこかしこに見られ、明らかに産卵時期がずれているようだった。鮭の個体数が人工孵化による放流前より少なかったのかどうかは定かではないが、引き続き小高周辺の生物を記録して行こうと計画している。
と同時に、16年4月の「避難指示解除準備区域」指定解除による帰還を間近にして除染作業や解体・新築工事が進む小高区(人口1万3千人)の姿も日々刻々と変化している。8月末から届け出制による「準備宿泊」が開始され、9月28日は仮設店舗「東町エンガワ商店」も開店。コハクチョウの群れが旅立つ頃、小高の住民にとっても震災前から6年ぶりの待ち遠しい春が訪れる事だろう。(すぎた和人)。
『小高の春』クラウド・ファンディング(制作支援)のお願い
原発事故後、人口放流が途絶えた事によって自然孵化した天然サケの群れと、2016年4月の住民帰還に向かう旧警戒区域・南相馬市小高区を対比させ、福島の現状ーーあるいは原発再稼働に進む日本の状況を問う記録映画「小高の春」(2016年6月完成予定)を現在制作しています。撮影は住民帰還が始まる春まで続きますが、撮影機材の補充、移動費、そして小高川の水質検査( 「いわき放射能市民測定室 たらちね」にてトリチウムとセシウムの解析を依頼中)等の予算不足に悩まされています。特に小高川は過去に除染後の汚染水が放流された騒ぎがあり(業者は処理し基準値を下回っていたと報告)、出来ればより高度な測定でストロンチウムも解析してみたいと考えています。予告編をYouTubeにアップ致します。よろしければ、製作費のご支援(ひと口5000円)を頂けると大変助かります。ご協力頂いた方には、エンディング・クレジットにてお名前掲載(希望者のみ)致します。また、ストロンチウムの有料測定は、市民測定室「たらちね」の支援にもなります。ご協力をお願い致します。
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